5月5日、こどもの日(端午の節句)には、柏餅や粽(ちまき)を食べたり鯉のぼりや五月人形を飾るなど、いろいろと行事があります。
その中でも「菖蒲湯」に入る事は欠かせないものの一つですよね?
清々しい香りがする菖蒲を浮かべたお湯に浸かると、リラックス出来て癒やされます。
でも、何故こどもの日(端午の節句)に菖蒲湯に浸かるのでしょうか?
菖蒲湯の風習は、いつから始まったのでしょうか?
何故菖蒲の葉を使うのでしょう?
菖蒲の葉にはどんな効能があるのでしょうか?
今回のコレドウ?は「菖蒲湯の効能や由来」についてです。
菖蒲湯が始まった由来や菖蒲の葉が持つ効果、こどもの日との関係を詳しく見て行きます!
またご家庭で菖蒲湯を作る方法や、自宅以外で菖蒲湯を楽しめる場所、菖蒲湯以外の菖蒲の活用方法なども併せてご紹介します。
このページを参考に、今年は是非!菖蒲湯に入ってみてくださいね。
それでは、早速始めましょう!!
Contents
菖蒲湯にはどんな効能があるの?
菖蒲湯は、ショウブ目ショウブ科の「菖蒲」という植物の茎や葉を湯船に入れ、香りや効能を楽しむ「薬湯」の一種です。
菖蒲は池や川などに生える多年草で、日本では北海道から九州まで広く分布している身近な植物。
別名ハショウブ・ニオイショウブ・カオリショウブとも呼ばれています。
菖蒲、と聞くと紫・白・黄色などの鮮やかで美しい花を持つ花菖蒲を思い浮かべがちですが、こちらはアヤメ科アヤメ属で、菖蒲湯に使う菖蒲とは種類が違います。
菖蒲湯に使う菖蒲は花菖蒲と比べると見た目は少し地味です。
しかし、見た目は地味でもその葉・茎・根には古くから効能があるとされています。
その成分と効能は主に以下の通りです。
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★効果が期待できる部位
・葉、茎、根
★有効成分
・葉、茎、根には精油成分が多く含まれているため、独特の爽やかな匂いがする。
※主な成分…テルペン、セスキテルペン、アザロン、オイゲノール
★主な効能
・血行促進、疲労回復、神経症、関節痛、筋肉痛
精油成分の香りにはアロマテラピー効果があり心身にリラックス効果をもたらす
※精油…別名エッセンシャルオイル。植物の花や葉・果皮・根などを蒸したり皮を搾ったりして香り成分を抽出した天然素材のエッセンスのこと。種類によって心身に様々な作用をもたらしてくれる。
菖蒲は根の部分に一番効能があるとされています。もし根付きの菖蒲が手に入ったら根ごと菖蒲湯に使ってみてください。より効果が期待できるかも知れません。
もちろん、葉や茎だけでも効果は十分に期待出来ますよ!
また、市販される菖蒲湯用の菖蒲にヨモギが一緒に付いているものがありますが、ヨモギは菖蒲と同じように血行促進効果、さらには保湿効果もあるので是非一緒に湯船に入れてみましょう。
血行促進・疲労回復、体の痛みにも効果が期待出来て、さらに爽やかな匂いにはアロマテラピー効果もあるなんて…菖蒲はまさに日本のハーブ!効能もお風呂にピッタリですね。
菖蒲湯の由来
端午の節句に菖蒲湯に浸かるという風習はいつから始まったのでしょうか?
それは今から2000年以上前の中国(春秋戦国時代頃)に楚の屈原という政治家の命日である5月5日に粽(ちまき)を食べたり川で龍を模した船の競争を行う風習が起源と言われています。
戦国時代を経た唐の時代には、毎年の暦を作る際の決まりである「暦法」が制定されました。
その中で定められた季節の変わり目を5つに区切った「五節句」はどの日も奇数が重なり、病や邪気に侵されてしまう悪日とされました。その中の5月5日が「端午」と呼ばれ、その日には邪気払いの行事が行われるようになり、もともとあった風習と合わさって「端午の節句」として定着しました。
また、端午の時期である旧暦の5月5日頃は現代の歴では6月の中旬頃にあたり、実際に気候は高温多湿で、伝染病や毒虫の害が酷い時期でした。
そこで人々はこの過酷な状況=邪気を払う為に野で菖蒲や蓬などの薬草を摘み、病除けのために色鮮やかな絹糸を肩に巻き、蓬で作った人形を飾り菖蒲を門に掛け、菖蒲の葉を酒に浸した「菖蒲酒」を飲みました。
菖蒲は、当時の中国では既に薬草として利用されており、葉を煎じて腹痛や打ち身の患部への治療薬として、また根は漢方薬として胃薬や解熱・ひきつけ・創傷の薬として使われていました。
また独特な強い匂いが邪気を払うとされ、高温多湿の気候と伝染病や害虫が発生して体調が崩れやすくなる端午の節句には欠かせない植物になったのです。
また、中国ではもともと5月5日は蘭(フジバカマ)を入れた湯に入りその香りで邪気払いするという「浴蘭節」という風習がありました。
平安時代に端午の節句の風習が伝来すると、最初に朝廷の貴族たちがその風習を取り入れ、武家文化の台頭と共に菖蒲と尚武(武道を尊ぶの意)が同じ音であることから、次第に邪気払いの行事から「男の子の節句」へと発展。江戸時代には庶民の間でも端午の節句を祝う風習が広まりました。
平安時代に中国から「浴蘭節」も伝わったと考えられていますが、日本では風呂に「蘭(フジバカマ)」を入れるという風習があまり広まらず、代わりに菖蒲をいれた「菖蒲湯」が広まりました。
江戸時代に銭湯が登場してまたたく間に庶民の間に浸透すると、銭湯で端午の節句に菖蒲湯を行うようになり、「菖蒲湯に入ると病気にならない」「菖蒲湯に入れば夏を元気に過ごせる」との評判から大人気になり、銭湯の普及とともに庶民にも風習が広まり、今に至っているのです。
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菖蒲湯の効果的な作り方
ここまで、菖蒲の効能や菖蒲湯の由来と歴史を見てきました。
長い歴史の中で人々に愛され続けて来た菖蒲湯。
ここからは菖蒲の入手方法や、より効能を楽しめる菖蒲湯の作り方をご紹介します。
こどもの日は是非ご家庭でも楽しんでみませんか?
菖蒲はいつ頃どこで手に入る?
菖蒲湯には生の菖蒲が絶対不可欠。
菖蒲の群生地が近くにあったり、自宅で栽培していない限りは買わないといけませんが、主に以下の場所で束でビニール袋に入った状態の菖蒲を手に入れる事が出来ます。
- スーパーマーケット
- ホームセンター
- 八百屋
- 生花店
上記の他に道の駅などの地元農産物の直売所でも、売っている場合があります。
4月下旬頃〜5月5日のこどもの日までの期間限定販売ですが、上記のどこでも比較的手に入りやすいでしょう。価格は地域によって差がありますが、大体4〜500円前後。
また、こどもの日当日は菖蒲を購入する人が多く、タイミングが悪いと売り切れになってしまう可能性が高いので、2〜3日前に買って当日まで保存しておけば安心です。
買って来た菖蒲はこどもの日当日までなるべく鮮度をキープしたまま保存したいもの。
上手な保存法をご紹介しますので、是非試してみて下さい。
買ってきた菖蒲を鮮度をキープしたまま保存する方法
- 1〜2日程度…新聞紙に包んで直射日光を避け涼しい場所で保管
- 2〜1週間程度…菖蒲をラップできっちり包み冷蔵庫で保管
※保存の際の注意点※
- 菖蒲の精油成分が揮発してしまうので乾燥させないようにしましょう。
- 葉が傷んで変色してしまうので、バケツ等に張った水に浸けての保管は避けましょう。
なお、ご紹介した場所でどうしても手に入らなかった場合は、ネットショップで真空パックになった菖蒲や菖蒲の苗、菖蒲を使った入浴剤などを購入するという手段もあります。
今挙げた3点は保存が効くので、こどもの日よりだいぶ前でも傷み等を気にせず購入出来ますね。ちなみに菖蒲は鉢植えでも比較的簡単に栽培出来るので、一番効能のあるとされる根が収穫出来る苗を購入して育てるのもなかなか良いですよね。
効能がより楽しめる菖蒲湯の作り方
沢山の効能を持つ和のハーブ、菖蒲。
せっかく菖蒲湯にするなら、その効能を余すことなく楽しみたいですよね。
そこで、効果的な菖蒲湯の作り方を3つご紹介します。
給湯方式や家族構成に応じて、一番合う方法を試してみて下さいね。
菖蒲をそのままの状態で使う方法
ポイントは、いつもの設定温度よりも少し高めに設定すること。
温度が高いと、菖蒲の有効成分がより抽出されます。
- 菖蒲はバラバラにならないよう、輪ゴムなどで束ねておく(1束約10本が目安) ヨモギ付の場合一緒に束ねる
- 温度設定はいつもより少しだけ高めにする
- 給湯式:湯が入っていない状態の浴槽に先に菖蒲の束を入れてから給湯する
- 湯沸かし式:水が張ってある浴槽に菖蒲の束を入れて湯沸かしする
- 湯が沸いた後は適温まで冷ましてから入る
※ヨモギに含まれるツヨンという成分には子宮を収縮させる作用があり流産や早産に繋がる恐れがあるとされています。念の為妊婦さんはヨモギを入れるのは避けて下さい。
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菖蒲を刻んで使う方法
菖蒲の葉は、怪我をするほどではありませんがシュッと尖っています。赤ちゃんや小さいお子様がいるご家庭は、念の為に菖蒲を刻んで使う方法を試してみて下さい。
刻むことによって菖蒲の有効成分が湯に溶け出しやすくなり、一石二鳥かも知れません。
- ガーゼのハンカチ、出汁の材料を入れる「だしパック」、目の細かい洗濯ネットなどを用意する
- 菖蒲を包丁で細か目に刻む刻んだ菖蒲を用意したガーゼのハンカチ、出汁の材料を入れる「だしパック」、目の細かい洗濯ネットなどに入れて縛るなどして中身が出ないようにする
- そのまま浴槽に入れる、または熱湯の入った洗面器に入れて10〜15分程度置き、成分が抽出された洗面器の湯を浴槽に入れてよくかき混ぜる
菖蒲の根(漢方)を使う方法
どうしても菖蒲を買えなかった方や、より高い効能を実感してみたいという方には、漢方薬にもなっている「菖蒲根(菖蒲の根を乾燥させたもの)」を刻み、一掴み分を料理で使うだしパックに入れて煮出し、その汁を湯船に混ぜるという方法もあります。
※一掴み分の菖蒲根を煮出す水の量は、購入先で確認してみてください。
一番効能があると言う根の部分を使うので効果は期待出来そうですが…ネックは値段で、500gで4,000円弱ほどしてしまいます…
予算と相談しながら試してみてくださいね。
こどもの日は銭湯で菖蒲湯に入れる!
どうしても菖蒲湯が作れそうもない…としょんぼりしている方に朗報です!
5月5日、こどもの日(端午の節句)には、全国各地の銭湯やスーパー銭湯、日帰り温泉施設などで菖蒲湯が行われます。
東京都のみの情報となりますが、5月5日こどもの日(端午の節句)には小学生以下のお子様は銭湯の利用料がなんと無料!嬉しいですね。
東京都の銭湯情報は、東京都銭湯組合の公式HPを参照してみてください。
↓ ↓ ↓
広々とした銭湯の湯船で菖蒲湯に浸かれば、体も心もリラックス出来そうですよね!
是非近所の銭湯やスーパー銭湯、日帰り温泉施設などで「菖蒲湯」のイベントが行われるかどうかチェックしてみて下さい。
他にもある!菖蒲の利用方法
(出典:福寿家HPより)
菖蒲湯だけではありません!こどもの日(端午の節句)には他にも菖蒲を使った行事があるんです。
菖蒲湯で使ったり、余ったりした菖蒲も残すところなく使えますよ!
そのいくつかをご紹介しますので、是非試してみて下さいね。
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こどもの日(端午の節句)前日
こどもの日(端午の節句)前日から、菖蒲が活躍します。
翌日の節句に備えて邪気が家の中や自分の体に入ってこないよう、邪気払いとして活用されます。
★軒菖蒲…こどもの日(端午の節句)の前日、5月4日の夜に菖蒲とヨモギを束ね、魔除け・火除けの意味で軒先につるしたり屋根に載せ、5日の朝に取り除きます。今ではあまり見られなくなったようですが、軒先がないマンション等の集合住宅ではベランダなどに吊るしてみませんか?
また菖蒲はその匂いが虫よけになると古くから信じられて来ました。軒菖蒲が邪気だけでなく虫も払ってくれるかも知れませんね。
★菖蒲枕…平安時代、こどもの日(端午の節句)の前日の5月4日の夜に、就寝中の無防備な状態を邪気から守るため菖蒲の葉とヨモギで作った枕で眠る風習がありました。後に菖蒲を薄紙に包んで枕の下に敷いて眠るという形になったそうでです。
菖蒲やヨモギはリラックス効果もあるのでさながらアロマテラピーのようなものだったのかも知れません。枕の下にしかなくても枕元に吊るして置くだけでも、匂いの効果で安眠出来そうですね。
ちなみに、菖蒲枕で使った菖蒲を翌日、菖蒲湯に使うのだそうです。
こどもの日(端午の節句)当日
こどもの日(端午の節句)当日は、菖蒲湯はもちろん食卓や子どもたちの遊びにも菖蒲が使われます。
遊びの中にもしっかり邪気払いの意味が込められていたり、食卓では大人も菖蒲を楽しみながら健康増進をはかる事が出来るのです。
こどもが喜ぶ菖蒲の活用法
★鉢巻…菖蒲湯に入っている時に、葉を鉢巻のように頭に巻くと「頭が良くなる」「健やかに成長する」という言い伝えがあります。また、お腹に巻くと病気にならないと言われているそうです。
菖蒲の鉢巻と聞いて、何となくネクタイを鉢巻しているサラリーマンの姿を想像してしまいましたが…言い伝えを考えると、絶対やっておきたいですよね!
★菖蒲笛…菖蒲の葉を10〜15cmぐらいの長さにカットしてから筋などを取り除き、横向きにしてハーモニカのようにくわえて息を吸ったり、縦にして切り口をくわえて息を吐いたりして音を出す草笛の一種です。なかなか音を出すのは難しいようで、コツが要りそうです。
★菖蒲打ち…菖蒲の葉を編んで縄状にし、地面にたたきつけて大きな音の出たものを勝ち、または切れたほうを負けとする遊びです。遊びの要素が強いですが、地面に菖蒲を叩きつけて邪気払いをしているという意味もあります。
こどもの日(端午の節句)には「菖蒲打ち大会」などのイベントが行われている地域もあります。
★菖蒲切り…菖蒲の葉が刀の刃に似ている事から、菖蒲の葉を剣に見立てて行うチャンバラごっこの事。武道の上達と、やはり邪気の退治の意味があります。
江戸時代初期までは菖蒲切りの前に石打と呼ばれる石投げ合戦をやってから行っていたようですが、危ないとの事で、それ以降石打は禁止となりました。
食卓での活用法
こどもの日(端午の節句)当日は、食卓でも菖蒲が彩りを添えます。
こどもが主役のこの日ですが、大人だからこその方法で菖蒲を楽しめますよ。
★箸置き…菖蒲の葉を適当な長さに切り、結んだり折り畳んだりして箸置きを作ります。青々とした見た目と独特の香りが、食卓に清々しさを運びます。
★掻敷…菖蒲の葉の鮮やかな緑色はこの時期の和食に使う掻敷にぴったりです。
焼き物や刺盛りに爽やかな色を添えてくれます。
★菖蒲酒…1リットルの日本酒に対し、菖蒲の根または根本に近い白い部分を薄くスライスしたもの軽く一掴みを浸して菖蒲の香りをつけたもの。大体30分も浸ければ香りが移ります。飲む時には短く切った葉をお酒に浸しておくと、良い香りが持続します。
菖蒲酒には胃腸の調子を整える、疲労回復、リラックス効果などの効能があります。
大人だからこそ楽しめる菖蒲酒。こんなにうれしい効能があるとは…思わずお酒も食事も進んでしまいそうですね。
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こどもの日(端午の節句)以降、余ってしまった菖蒲の活用法
こどもの日(端午の節句)で余ってしまった菖蒲はありませんか?
捨てるのはもったいない〜。
菖蒲は防虫効果があるので、虫よけや防虫剤の代わりにもなるのです。
余った菖蒲を2〜3cmぐらいに細かく切ってから、洗濯ネットなどに入れて天日干しします。カラカラに乾いたら穴をあけた箱に入れ、部屋に置くと虫よけになります。また、乾いた菖蒲をティッシュやだしパックなどに包んで洋服の引き出しやクローゼットにおいて防虫剤の代わりにもなります。
菖蒲湯で湯船に浸けた菖蒲は精油成分が湯に溶け出して匂いも効能もなくなっているので、湯から引き上げて捨てましょう。
有効成分が溶け込んだ残り湯は、良い香りが残っています。
翌日残り湯を家の掃除に使ってみては?
残り湯で洗った雑巾で掃除をすれば家の中に菖蒲の良い匂いが漂うことでしょう。
残り湯に匂いが付いていることもあるので洗濯用の水としての使用は避けましょう。
さいごに
いかがでしたか??
今回は、菖蒲湯の効能や由来、作り方から様々な活用法まで、詳しく見て行きました。
菖蒲には沢山の効能があったのですね!そして匂いはアロマテラピーの効果もあるとは…
本当に菖蒲は素晴らしい和のハーブだとつくづく思いました。
そして、菖蒲の効能を最初に発見したであろう古代人に対して感謝の気持ちがわきました。
その人が効能に気が付かなければ、菖蒲湯を始めとする様々な行事が存在しなかったかも知れない…
近年は、こどもの日(端午の節句)に家で菖蒲湯に入るというご家庭がめっきり減ったそうです。
いしにえの中国から伝わり、日本で発展した菖蒲湯。
これからもずっと、この伝統が続くと良いなと感じました。
是非、今年のこどもの日(端午の節句)は、菖蒲湯に浸かり、菖蒲酒を飲んで…
菖蒲尽くしで過ごしてみませんか?
では今回も、最後までお読みくださり、ありがとうございました。